数万円をかけて施工したのに、期待した状態になっていない。効果がなかったのではないか、と感じている人向けの記事です。
筆者は三級自動車整備士とキーパーコーティング技術2級の資格を持ち、ガソリンスタンドでコーティングを施工しています。すすめる側の人間です。
すすめる側だからこそ、施工した側に原因がある場合まで含めて書きます。
結論|「効果がない」は4つの別の症状です
「効果がない」という一言の中身は、人によって違います。整理すると4つです。
- 水をはじかない
- 艶がない・白っぽい
- 汚れが付く・落ちにくい
- 傷が入った
原因も対処も別です。 まとめて1つの方法で解決する話ではありません。
先に結論を書きます。戻るのは3つまでです。傷だけは戻りません。
店で相談を受ける中でいちばん多いのは①の「水をはじかない」です。そして①は、戻る可能性がもっとも高い症状でもあります。
どれに当てはまるかを決めてから読み進めてください。
症状①|水をはじかない
いちばん多い症状です。原因の大半は、被膜の上に汚れが乗っていることです。
被膜そのものが消えたのではなく、上に乗った膜が水の動きを邪魔しています。砂ぼこり、排気の油分、雨に混ざって流れてきた成分。目に見えない薄さでも、はじき方は変わります。
ここで多くの記事は「洗車をしましょう」と書きます。現場の実感は違います。シャンプー洗車だけでは戻らないことのほうが多い、というのが正直なところです。
戻すなら、表面の汚れを落とすケミカルを使ってください。店ではミネラルオフを使っています。すすぎのあと、固く絞ったクロスにケミカルを付けて拭き取ります。
拭き上げは1パネルずつ、仕上げまで終わらせてから次へ進んでください。全体にかけてから最後にまとめて拭くやり方ではありません。
多くはここで戻ります。 店でも「表面のケミカルで拭いても戻らなかった」という相談は、いまのところ受けていません。撥水が落ちたと感じたら、まずこれを試してください。
戻らなかったときの次の手
拭いても戻らない場合、次の判断は塗装そのものの状態で分かれます。
- 塗装の状態が悪い(水じみが内部まで進んでいる、表面が荒れている)→ ベースアップなどの下地処理を先に入れる
- 塗装の状態がよい → 再施工で戻す
順番が逆になると無駄が出ます。下地が荒れたまま上から重ねても、被膜の乗りは良くなりません。どちらに当てはまるかは、車を見ないと判断できません。 施工した店に持ち込んで見てもらってください。
一部分だけはじかないことがあります
車全体ではなく、特定の場所だけ水をはじかないことがあります。
現場でよく見るのは鳥のフンが付いた場所です。フン自体は落ちても、その部分だけ水のはじき方が変わったまま残ります。すすぎの水をかけると、そこだけ弾き方が違うのが分かります。
放置した時間が長いほど跡が残りやすくなります。付いた日のうちに落としてください(鳥のフンの対処の記事)。
症状②|艶がない・白っぽい
水じみと雨筋が固着している状態です。白いうろこ状の跡や、黒っぽい縦の筋が出ます。
固着したばかりであれば、症状①と同じケミカルで落とせます。「だいたい取れます」が正確な表現で、確実に取れるとは言えません。程度によります。
塗装の内部まで進んでしまったものは、拭いても戻りません。 対処は2つです。
- 削る(研磨して表面ごと落とす)
- 埋める(下地処理で凹凸を埋める)
どちらも専門店の作業になり、費用がかかります。そして、どちらでも完全には消えないことがあります。 程度による、としか書けない領域です。
水じみの見分け方と落とし方は車の水垢の落とし方の記事にまとめました。
症状③|汚れが付く・落ちにくい
ここは期待のズレであることが多い症状です。
コーティングは、汚れを寄せ付けないものではありません。 汚れを落ちやすくするものです。付くことは止められません。
「コーティングしたから洗車はいらない」と考えている人が、店にときどき来ます。数か月放置された車は、被膜があっても汚れが固まります。固まってしまえば、落ちやすさの差は意味を持ちません。
自浄効果を謳うメニューもあります。効くのは固着する前の汚れに対してです。雨で流れるのは、乗ってから時間が経っていない汚れに限られます。
コーティングでできることとできないことはキーパーコーティングの効果の記事で分けて書きました。
症状④|傷が入った
戻りません。 ここだけははっきり書きます。
コーティングは傷を防ぐものではありません。洗車で付く細かい傷を減らす助けにはなりますが、ゼロにはできません。
入ってしまった傷は、削るか埋めるかでしか対処できません。 表面のケミカルでも、かけ直しでも消えません。
傷を減らせるのは施工ではなく洗い方です。落ちない汚れを力でこすらない、乾いたクロスで拭かない、砂を拾ったクロスをボディに当てない。手順は黒い車の洗車傷対策の記事にまとめています。
施工した側に原因がある場合
読者の使い方だけの問題にはしません。施工の側に理由があることもあります。
塗装の状態が悪いと、被膜の乗りが悪くなります
年数が経って表面が荒れている車、鉄粉が刺さったままの車では、被膜が本来の形で密着しません。上位のメニューを選んでも、新車にかけた場合とは仕上がりがそろいません。
期待していた艶が出ないのは、被膜の性能ではなく下地の問題である場合があります。
施工そのものがうまくいっていない場合もあります
きちんと施工できていなければ、期待した状態にならないことはあり得ます。 ムラが残っていたり、塗り残しがあったりする場合です。
どこまでが正常でどこからが不良かは、車を見ないと判断できません。 写真でも分かりません。気になるなら、施工した店に現車を持ち込んでください。
メンテナンスを入れていなければ、短いほうの年数です
「3年もつ」「6年もつ」という表記は、メンテナンスを入れた場合の数字が長いほうです。入れていないなら短いほうで見てください。
年数を過ぎて効果が落ちるのは、不具合ではなく想定どおりの動きです。メンテナンスの中身と費用はコーティングのメンテナンスの記事にまとめました。
契約時の条件を確認したい場合はディーラーコーティングとキーパーの比較記事も参考にしてください。
よくある質問
施工して半年で撥水が落ちました。不良ですか
まず症状①を試してください。表面の汚れが原因なら、拭き取るだけで戻ります。
それでも戻らない場合は、施工した店に状態を見せてください。判断できるのは、施工した内容を知っている側です。
ムラがある、水はじきや仕上がりに納得できない、といった場合に対応する仕組みは用意されています。 内容は店舗によって違うので、施工した店に直接確認してください。遠慮する場面ではありません。
事故で板金修理をしました。コーティングはやり直しですか
保険で再施工できる場合があります。
板金や塗装をした部分は、当然ながら被膜も一緒になくなります。修理の内容によっては、その再施工を保険の対象に含められます。
修理の見積もりを取る段階で、コーティングの再施工も一緒に相談してください。 あとから申し出ると通らないことがあります。
洗車機に入れたのが原因ですか
1回で被膜がなくなることはありません。傷については、汚れをためたまま入れるほうが付きやすくなります(洗車機は傷つくのかの記事)。
市販の撥水スプレーを上からかけてもいいですか
専門店の被膜の上には、基本的に不要です。施工した店に確認するのが確実です。
はじきが落ちているなら、足すより先に落とすほうが順番として正しくなります。
もう一度かけ直すべきですか
症状①〜③を試してから決めてください。汚れが原因なら、かけ直さなくても戻ります。
年数が過ぎていて、艶も撥水も落ちているなら、かけ直しは選択肢になります。判断の材料はコーティングのデメリットの記事にまとめています。
効果がないなら、次からしないほうがいいですか
洗車をどれだけできるかで決めてください。手入れをしない前提なら、金額の大きいメニューほど回収できません。 判断の基準は新車のコーティングは必要かの記事に書きました。
まとめ|切り分ければ、3つは戻ります
- 「効果がない」は水をはじかない/艶がない/汚れが付く/傷が入ったの4つに分かれます
- 相談でいちばん多いのは①。そして①がいちばん戻ります
- ①②はケミカルで戻る可能性があります。 ただしシャンプー洗車だけでは戻らないことのほうが多く、表面の汚れを落とすケミカルが要ります
- 拭いても戻らないときは、塗装の状態で分かれます。 悪ければ下地処理、よければ再施工
- ②が塗装の内部まで進んでいれば、削るか埋めるかです。 完全には消えないことがあります
- ③は期待のズレです。被膜は汚れを寄せ付けるものではありません
- ④の傷は戻りません。 削るか埋めるかでしか対処できません
- 施工側の要因もあります。 下地の状態が悪ければ乗りが悪く、メンテナンスを入れなければ短いほうの年数です
効果がなかったのではなく、効果の中身と期待がずれていた場合がかなりあります。どれに当てはまるかを決めてから、次の一手を選んでください。

