カー用品店の棚で、タイヤワックスの「水性」と「油性」を見比べる。裏の説明を読んでも、どちらを買えばいいのか決まらない。
調べると「油性はタイヤがひび割れる」と書いてあるページも出てきます。今使っているものを続けてよいのかも、分からなくなります。
筆者は三級自動車整備士とキーパーコーティング技術2級の資格を持ち、ガソリンスタンドで洗車とコーティング、タイヤ交換を担当しています。洗車の最後にタイヤワックスを塗るのが毎日の仕事です。
先に開示します。市販の水性と油性を自分で買って使い比べたことはありません。書けるのは、店で毎日塗っている水性の話と、お客様から実際に言われたことです。
本記事では、現場でどちらが使われているかと、使っている理由、塗らない車があることを書きます。
結論|店で使っているのは水性だけです
先に3つお伝えします。筆者の店で使っているタイヤワックスは水性だけです。塗るのは、店で洗った車すべてです。塗らない車が1種類あります。
油性は店にありません。市販品について聞かれたときも、水性を勧めています。
塗る頻度は「月に1回」ではありません。店で洗車をした車には、洗車のたびに塗っています。
塗らない車は、タイヤの側面に白い文字が入っている車です。
水性を使っている理由は、キーパーの指定だからです
筆者の店はキーパーコーティングの施工店です。洗車とコーティングに使うケミカルはキーパーの指定で、タイヤワックスも水性が指定されています。
店の判断で水性を選んだわけではありません。指定どおりに使っている、というのが正直なところです。
指定の理由を本部に確かめたことはありません。一般に、油性はゴムの劣化を早めやすいといわれています。 水性が指定されている背景には、その点があると筆者は見ています。
読者が同じ選び方をするなら、迷ったときは水性を選んでください。
油性を勧めない理由
油性を使ったことがないので、仕上がりの差を自分の手で比べたことはありません。それでも油性を勧めないのは、劣化を早めやすい点と、すべりやすくなる点があるためです。
油性はシリコーンを石油系溶剤で溶かしています。溶剤がゴムに入ると、ゴムを傷める方向に働くとされています。タイヤはゴム部品なので、傷めば止まる性能に関わります。
油性は艶が強く出て、雨にも強いとされています。見た目を優先する方には向いています。
ただし、タイヤは見た目の部品ではありません。走る・曲がる・止まるに直結する部品なので、迷うなら劣化の少ない水性を選んでください。
水性と油性の違いは、シリコーンを何で溶かしているかです
タイヤワックスの違いは、成分と仕上がりと持ちの3つです。
成分|油性は石油系溶剤、水性は水
どちらも艶を出しているのはシリコーンです。違いはシリコーンを溶かしている液体で、油性は石油系溶剤、水性は水です。
・油性は溶剤がゴムに入るので、長く使うほど劣化を早める方向に働くとされています。
・水性は水なので、ゴムへの影響は少ないとされています。
石油系溶剤を使わない油性もあります。ラベルの成分欄で見分けてください。
見分け方はラベルの「種類」や「成分」の欄です。ブリヂストンの解説では、水性は「水性」「シリコーン」「界面活性剤」、油性は「油性」「石油系溶剤」と書かれていることが多いとしています。
仕上がりと持ち|油性は黒艶で雨に強く、水性は自然な黒で落ちやすい
油性は濡れたような黒艶が出て、雨で落ちにくいとされています。水性は落ち着いた黒で、雨や洗車で落ちやすい性質です。
店で塗っている水性でも、雨で落ちる実感は多少あります。何日もつかは、車の使い方で変わるので数字では言えません。
雨のあとに艶が薄くなったと感じたら、次の洗車の最後に塗り直してください。落ちたからといって、タイヤが傷んだわけではありません。
艶の強さを求めるなら油性、自然な黒でよいなら水性、という分け方は各社と同じです。筆者の店は、艶より劣化の少なさで水性を使っています。
「油性はひび割れる」は、現場では確認できていません
正直に言うとワックスが原因でひび割れたタイヤを、筆者は見分けたことがありません。
「タイヤワックスの悲劇」という言い方があります。油性を塗り続けたタイヤが、ある日ひび割れだらけになっていた、という話です。溶剤がゴムを傷めるためだと説明されています。
現場で、ひび割れのひどいタイヤはよく見ます。ワックスが原因なのか、年数が原因なのかは、見ただけでは分かりません。タイヤのゴムは4〜5年で硬くなり、硬くなった先でひび割れが出ます。 ワックスを塗っていなくても、年数が経てば割れます。
年数と切り分けられないので、油性が原因だと断定はしません。油性なら大丈夫だとも言いません。分からないことは分からない、が現場の答えです。
ひび割れが気になる方は、先にタイヤの製造年週を見てください。側面の4桁の数字で分かります。製造年週の見方は売る前のタイヤ・バッテリー交換は必要ありませんという記事にまとめました。
塗る頻度は「洗車のたび」です
店では、洗車をした車には毎回塗ります。 手洗い洗車、コーティング、車検や点検の洗車サービス、タイヤ交換。店で洗った車は、基本的にすべて塗って返しています。
「月に1回」の目安は、店の運用と違います
各社の解説では、水性は月に1回、油性は2〜3か月に1回が目安とされています。店の運用は、月1回の目安とは違います。塗るかどうかは日数ではなく、洗車をしたかで決まります。
洗車の仕上げとして塗るので、洗わない日にタイヤだけ塗り足すことはありません。洗ったのに塗らないこともありません。
同じ車に週1回のペースで塗る機会は、実際にはほとんどない状態です。手洗い洗車に毎週来られるお客様は、そう多くないからです。
自分で洗う方も、同じ考え方で構いません。洗車の最後に1回塗る。洗わない日は塗らない。 日数を数える必要はありません。
塗らないでほしいと言われる車があります
タイヤの側面に白い文字が入っている車です。「ホワイトレター」と呼ばれます。 ジムニーやハイエースに多く、メーカー名や銘柄が白く塗られています。
ワックスを塗ると、白い塗装が取れます
ホワイトレターの白は、タイヤの表面に塗られた塗装です。ワックスを塗ると、白い塗装が取れます。
筆者自身、ホワイトレターのタイヤにワックスを塗り、白を落とした経験があります。以来、白い文字のあるタイヤには塗っていません。お客様のほうから「タイヤワックスは塗らなくていい」と言われることもあります。
ホワイトレターの車に乗っている方は、洗車を頼むときに一言伝えてください。「タイヤワックスは塗らないでください」で通じます。
自分で洗う方は、今日タイヤの側面を見てください。白い文字があれば、ワックスを塗らないでください。 一度取れた白は戻りません。
店の塗り方|洗車の一番最後に、スポンジで塗ります
塗る順番は決まっています。必ず洗車の一番最後です。 拭き上げまで終わってから、タイヤに移ります。
手順は3つです
持ち手つきのスポンジにワックスをスプレーして、タイヤの側面に塗ります。 タイヤに直接スプレーはしません。スポンジに付けてから塗ると、ホイールやボディに飛びにくいからです。
塗ったあと、ワックスが水滴として残っているなら拭き取ってください。残したままにすると、走ったときに飛び散ります。
ホイールに付いた分も、同じときに拭き取ります。付いたまま乾くとシミになるので、乾く前に拭いてください。
接地面(道路に当たる面)には塗りません。ブリヂストンやソフト99の解説でも、接地面に塗るとグリップが落ちるとされています。塗るのは側面だけです。
洗車の順番の中での位置
タイヤワックスが最後なのは、ホイールの拭き上げが最後だからです。洗車の順番は洗車の順番が分かる|「上から下へ」だけでは汚れが落ちない理由という記事にまとめました。
道具は、持ち手つきのスポンジが1つあれば足ります。洗車道具をそろえるなら、初心者の洗車セットは8点で十分という記事を見てください。
履き替えで外したタイヤは、店では落としていません
各社の解説では、タイヤを保管する前にワックスを落とすことが勧められています。ワックスの膜がゴムの油分を閉じ込めて、硬化が進むためと説明されています。
筆者の店では、履き替えで外したタイヤのワックスを落としていません。 外したタイヤはそのままお客様に返しています。落としてほしいと言われたことも、これまでありません。
落とすかどうかは、読者の判断で決めてください。水性なら水洗いで落ちます。油性は水洗いでは落ちません。 気になる方は、保管前に水で洗い流してから乾かしてください。
保管の仕方そのものは、直射日光と雨を避けて、風通しのよい場所に置くのが基本です。ワックスを落とすことより、置き場所のほうが影響は大きいと筆者は見ています。
よくある質問
新品のタイヤにも塗りますか
塗ります。店でタイヤ交換をしたあとも、タイヤワックスを塗って返しています。
新品だから塗ってはいけない、という理由はありません。塗らなくても困りません。
市販品はどれを買えばいいですか
筆者は市販品を使ったことがないので、製品名は挙げません。選ぶなら、ラベルの「種類」欄で水性と書いてあるものを選んでください。
お客様に聞かれたときも、「使ったことがないので明言はしませんが、油性より水性のほうがよいと思います」と答えています。
接地面に塗るとどうなりますか
グリップが落ちます。接地面には塗らないでください。
側面だけに塗るのは、見た目のためではなく安全のためです。
ボディやホイールに付いたら
乾いたクロスで、すぐに拭き取ってください。乾くとシミになり、あとから落としにくくなります。
スポンジに付けてから塗れば、付く量は減らせます。
コーティングしている車にも塗っていいですか
タイヤに塗る分には問題ありません。ボディの被膜には触れません。
ボディに飛んだ分だけ、すぐに拭き取ってください。
まとめ|店は水性、洗車のたび、白い文字には塗らない
現場でやっていることは4つです。
- 使っているのは水性だけです。 キーパーの指定で、油性は店にありません
- 塗るのは洗車のたびです。 日数ではなく、洗ったかどうかで決まります
- ホワイトレターのタイヤには塗りません。 白い塗装が取れます
- 油性でひび割れるかどうかは、現場では確認できていません。 年数によるひび割れと切り分けられないからです
今日できることが1つあります。タイヤの側面を見て、白い文字があるかを確かめてください。 あればワックスは塗らない。なければ、洗車の最後に水性を側面だけに塗る。それで足ります。

