車を売ると決めたあと、「タイヤだけでも新しくしておいたほうが高く売れるのではないか」と考える方がいます。バッテリーも同じです。
結論から書きます。売るから替える、という判断は現場にありません。
私はガソリンスタンドでタイヤとバッテリーの交換を担当しています。「売るので替えてください」と頼まれた経験は、今のところありません。替えるかどうかは年数と状態で決まり、売却の予定では基準は変わりません。
この記事では、替えなくてよい理由を部品代の実額で示したうえで、現場が交換を勧めている基準と、その基準が変わる唯一の場面を書きます。
先にお断りしておきます。査定額そのものや、替えたらいくら上がるという金額は書けません。 査定は専門ではないため、書けるのは、交換する側から見た部品の状態と、実際にかかる部品代です。
結論|売るから替える、という判断はありません
理由は2つです。部品代のほうが大きいことと、替える基準がもともと売却と関係ないところにあることです。
1つ目は金額です。タイヤもバッテリーも、査定額が動く幅より部品代のほうが大きくなります。実額は次の見出しで出します。
2つ目は基準です。現場が交換を勧めるのは、年数が経っているか、状態が落ちているかの2点だけです。売る予定があるかどうかは判断に入りません。
今、自分の車がどちらに当たるかは、その場で確かめられます。タイヤの側面に刻まれた4桁の数字を見てください。 作られた年と週が分かります。読み方は後半に書きました。
答えが変わる場面は1つあります。引き渡しまでに、まだその車に乗るときです。 売ると決めた車でも、公道を走る以上は基準が変わりません。
タイヤは4本で4万円から、20万円を超えることもあります
金額は2つです。タイヤは4本で4〜20万円以上、バッテリーは1〜5万円くらいです。
私の店で基本的に扱っているタイヤで、4本分の合計は4〜20万円以上です。ものによっては30万円以上のものもあります。どちらも部品代のみで、工賃は含んでいません。 おおよその額として受け取ってください。
自分の車がどこに当たるかは、見積もりを取れば分かります。車種・車名と、タイヤの側面に書かれたサイズを控えてから相談してください。 車名やサイズがわかっていると話が早く進みます。
アイドリングストップ車とハイブリッド車には、専用のバッテリーがあります。 車種ごとに対応する品番が異なるため、車検証の情報を控えてから相談してください。
査定額が動く幅と、上の金額を並べてみてください。払った分を取り戻す形にはなりません。
なぜ1つの金額にならないのか
タイヤの幅が広いのには、4つの理由があります。
- メーカーごとの違い
- タイヤサイズの差
- タイヤパターンの違い
- 車種に適応したタイヤの違い(バン用・SUV用・スポーツカー用など)
同じ「タイヤ4本」でも、軽自動車の標準的なものと、SUV用の大径サイズでは価格が別物です。
サイズはタイヤの側面に書かれています。「195/65R15」のような並びを探してください。 数字が読めれば、自分の車がどのあたりの価格帯かを店で聞けます。
自分の車がどこに当たるかで、金額は数倍変動します。 平均額を調べても、判断の材料にはなりません。
現場が交換を勧める基準
見ているのは3つです。バッテリーは3年、タイヤは4年、溝は1.6mm。 売却と切り離した、ふだんの基準を順番に書きます。
バッテリーは3年を目安にしています
3年以上経過していたら、交換をおすすめしています。 交換の目安が3年ぐらいだからです。
また、あまり長い距離を走らない方の場合、3年を待たずに交換が必要になる場合があります。 短い距離の走行を繰り返すと、走行中の充電が追いつかないためです。同じ走行の仕方はエンジンオイルにも効きます。詳しくはオイル交換の時期という記事にまとめました。
年数だけで決める必要はありません。点検のときに、バッテリーの診断結果を見せてもらってください。 結果が良好な場合、私はあまり強くはおすすめしません。
メーカー側の数字も添えておきます。GSユアサは、通常車用とアイドリングストップ車用バッテリーの寿命を2〜3年、ハイブリッド車の補機用バッテリーを3〜5年としています。現場の3年は、公表されている目安の範囲に収まる数字です。3年で必ず替えるという話ではありません。
タイヤは4年|ゴムが硬くなるからです
4年以上経過していたら、交換をおすすめしています。 タイヤもゴム部品のため、4〜5年でゴムが劣化して硬くなるからです。
硬くなったタイヤは、制動力が落ちたり、走行中のグリップが弱くなったりします。年数で声をかける理由は、溝ではなくゴムの側にあります。 溝が残っていても、止まる性能のほうは落ちていきます。
劣化は、結果としてひび割れにつながります。 ひび割れが見えているタイヤは、ゴムの劣化が表面に出てきた状態です。年数と状態は別々の基準ではありません。同じ1本の線の、手前と先です。
順番が逆に伝わらないよう、書き添えます。ひび割れもなく、溝にも余裕があるなら、4年を超えていても声はかけません。 逆に、4年経過していなくても、ひび割れや溝の減りがひどい場合はおすすめします。 年数は入口で、最後に決めるのは状態です。
自分の車が4年を超えているかどうかは、後半の「製造年週」で確かめられます。溝とひび割れは、車に近づけばその場で見られます。 先に状態を見てから、年数を確認してください。
ブリヂストンは、使用開始後5年以上のタイヤについて販売店などでの点検を推奨しています。製造後10年を経過したタイヤは、外観上使えるように見えても交換を推奨しています。現場の4年は、公表されている5年より少し早い数字です。矛盾してはいません。点検を受けてくださいと案内する段階が、店頭では一歩手前に来ます。
溝は1.6mmが下限です
残り溝の使用限度は1.6mmで、道路運送車両の保安基準で決まっています。
1.6mmの目安として、タイヤの側面にある△の印を探してください。 印の延長線上の溝の底に、盛り上がった部分があります。スリップサインです。1か所でもスリップサインが出たタイヤは、装着も走行もできません。
安全側の目安は別にあります。ブリヂストンは、夏タイヤについて残り溝4mm以下での交換をおすすめしています。替えどきを早めに知りたい方は、4mmのほうを目安にしてください。
1.6mmと4mmは別の数字です。 1.6mmは走ってはいけない線、4mmは替えどきの目安として案内される数字です。混ぜて覚えないでください。
製造年週は、自分で見られます
タイヤの製造時期は、側面の製造番号から読めます。下4桁のうち、前の2桁が週、後ろの2桁が年です。
読み方は1つだけです。「2412」と刻印されていれば、2012年の24週目、1か月を4週と考えると6月ごろに作られたタイヤです。
今駐車場にあるなら、4本とも見てください。 4本が同じ年とは限りません。1本だけ古いことがあります。
現場でも確認している項目です。買った日ではなく作られた日が分かるので、年数を判断する起点はここです。
バッテリーが上がると、査定の前で話が止まります
理由は1つです。動かない車は、見てもらえません。
現場では、部品を「走る・曲がる・止まる」で見ています。タイヤは3つすべてに入り、さらに車を支えています。バッテリーは3つの外側にあります。 エンジンがかかるかどうか、車が動くか動かないかの部品です。
査定に来てもらった日にエンジンがかからなければ、減点される前に査定そのものが進みません。 減額されるかどうかの話ではなくなります。
バッテリーを替えても直らないことがあります
買取業者のサイトには「バッテリー切れは簡単に直せる」と書かれています。現場から見ると、必ずしも直るとは限りません。
経年車で走行距離が10万キロを超えた車が、バッテリー上がりで入ってきたことがあります。調べると、オルタネーターが発電できていませんでした。 上がった原因がバッテリーの寿命とは限らず、発電する部品が止まっていれば、新しいバッテリーを積んでも同じことが起きます。
バッテリーが上がった車に乗っているなら、順番があります。新しいバッテリーを買う前に、発電できているかを見てもらってください。 替えてから同じことが起きると、費用が二重にかかります。
このお客様は車を手放すか迷っておられたため、お店で簡易的に買取の見積もりを出し、結果は約3万円でした。約3万円は相場ではなく、その1台について出した簡易的な見積もりの額です。修理して乗り続けるか手放すかという判断は、走行距離10万キロの車は売れますという記事にまとめています。
引き渡しまでに、まだ乗りますか
ここが唯一、答えが変わる場面です。売却が決まっていても、公道を走る以上は基準は変わりません。
まず走行距離を数えてください。通勤の往復が20kmで、引き渡しまで2か月なら、おおよそ800kmです。溝が1.6mmに近い状態で800km走るなら、売却とは切り離して判断します。
距離が読めないときは、状態のほうを見てください。ひび割れが出ているなら、年数に関係なく相談の目安です。
スリップサインが出ているなら、売る売らないの前に交換してください。 売ると決めた車でも、乗っている間の責任は自分にあります。査定のために替えるのではなく、自分が乗るために替えるという順番です。
スタッドレスのまま出すとき
冬用タイヤを履いたまま来店される車は、実際にあります。履き替えの時期を過ぎても、そのまま乗っている方は珍しくありません。
夏と冬の履き替えでは、外したタイヤをお客様へお返ししています。手元に夏タイヤが残っている方も多いはずです。
物置にある夏タイヤも、溝と製造年を確認してください。 長く置かれたタイヤは、走っていなくても年数が進みます。 履いているタイヤだけを見て判断すると、片方を見落とします。
査定でどう扱われるかについては、買取業者の記事が「ノーマルタイヤと大きく変わらない」と説明しています。私が現場で確かめた話ではないため、断定は避けます。
よくある質問
売る前にオイル交換はしておくべきですか
交換の時期が来ているなら、しておいて構いません。
売却のためにと考えると、判断が難しくなります。いつ買い手が付くかは分かりません。中古車として販売される際に納車前の整備が行われる場合もあり、販売店側で交換されるとも聞きます。店によって扱いが変わるため、確実なところは分かりません。
時期が来ているかどうかで決めてください。判断の材料はオイル交換の時期にまとめています。
バッテリーが上がったまま持っていっても売れますか
売れないわけではありません。動かない状態から始めると、手順が1つ増えます。
上がった原因がバッテリー以外にある場合もあります。交換すれば動く車なのか、ほかに原因があるのかは、見てみないと分かりません。
車検を通してから売ったほうが得ですか
答えが2つに割れる質問です。整備の側から見た考え方を車検の見積もりが高いという記事にまとめています。
洗車や傷はどうすればよいですか
外装と車内の扱いは車を売る前に洗車すべきかにまとめました。傷や凹みを直さずに出す理由も、あわせて書いています。
まとめ|替えるかどうかに、売るかどうかは入りません
- 売るから替える、という判断は現場にありません。 決めるのは年数と状態です
- バッテリーは3年、タイヤは4年が声をかける目安です。状態が良ければ、年数を超えていても勧めません
- 部品代はタイヤ4本で4〜20万円以上、30万円以上になるものもあります。バッテリーは1〜5万円です。どちらも部品代のみで、工賃は別です
- タイヤはゴム部品です。4〜5年で硬くなり、制動力やグリップが落ちます。 ひび割れは、その劣化が表面に出たものです
- 残り溝1.6mmが下限です。スリップサインが出たタイヤは走行が禁じられています。4mmは安全側の目安で、別の数字です
- バッテリー上がりの原因が、バッテリーとは限りません。 オルタネーターが発電していなかった例があります
- 答えが変わるのは引き渡しまでに、まだ乗るときだけです
今日できることが1つあります。タイヤの側面で、4桁の数字と△の印を探してください。 作られた年と、走ってよい溝が残っているかが、その場で分かります。
査定のために部品を替える必要はありません。替えるとしたら、それは自分が乗るためです。

