車を売ろうと調べていくと、一括査定にたどり着きます。同時に「電話が鳴り止まない」という話も目に入ります。
申し込むべきか迷ったまま、手が止まっている人は多いはずです。
先に立場を明かします。筆者は三級自動車整備士とキーパーコーティング技術2級の資格を持ち、ガソリンスタンドで洗車とコーティングを担当しています。買取の実務側に立った経験はありません。 相場も交渉のテクニックも書けません。
そのうえで、筆者は一括査定を使って自分の車を売っています。 売る側として1度通った立場から書きます。
書くのは3つです。電話が集中する仕組み、業界の自主規制で禁止されていること、筆者が使ったときに実際どうだったか。
結論|デメリットは事実です。ただし「我慢するもの」ではありません
電話が集中するのは事実です。仕組みの上でそうなります。
一方で、どこまでが普通の営業で、どこからがルール違反なのかには線が引かれています。中古車買取の業界団体である一般社団法人日本自動車購入協会(JPUC)が、会員向けの行動基準を公開しています。
多くの記事は「しつこい」と書いて、断り方のテクニックを並べて終わります。断ってよい線を知らないまま我慢する必要はありません。
なぜ申し込んだ瞬間に電話が来るのか
一括査定は、査定をしてくれるサービスではありません。申し込んだ人の連絡先を、複数の買取店へ配るサービスです。
査定額を出すのは各買取店です。サービス側は取り次ぎを担当しています。
買取の世界では、最初に接触した業者ほど成約率が高いと説明されています。連絡先が届いた瞬間に電話をかける動機が、業者の側に生まれます。申し込み直後に発信する自動システムを使う業者がある、という指摘も複数のメディアが書いています。
電話の本数は、申し込みのときに選んだ社数で決まります。 10社へ配られれば10社から来ます。想定より多いと感じるなら、原因は業者の熱心さではなく、申し込みの設定です。
筆者が使ったときは、3社から来ました
筆者が自分の車を売ったときはMOTA車買取を使いました。電話がかかってきたのは、簡易見積もりの結果が上位だった3社だけです。
MOTAは、申し込み後にネット上で各社の見積もりが出そろい、金額が高かった上位3社とだけやり取りする仕組みになっています。説明されているとおりに動きました。
同じ「一括査定」という名前でも、連絡先を全社へ一斉に配る型と、先に金額を出して絞る型では、電話の本数がまったく違います。申し込む前に見るべきなのは、サービス名ではなく配り方です。
ここからはルール違反です
JPUCの行動基準には、会員が守るべき内容が条文の形で書かれています。読者に関係する部分を3つ挙げます。
午後9時から午前8時までの電話・訪問勧誘
行動基準の第3条第5項で、午後9時から午前8時までの間の電話および訪問による勧誘が禁止されています。
深夜や早朝に着信が続くのは、営業熱心さの範囲ではありません。時間帯を理由に断って構いません。
契約解除の妨害と、不当に高額なキャンセル料
第6条第4項では、「契約の解除は一切認められない」といった拒否や、不当に高額なキャンセル料を請求して解除を妨害する行為が禁止されています。
さらに第6条第5項では、期限を過ぎたあとの申し出であっても、内容を真摯に聞き取って誠実に対応することが求められています。
「もう契約したので取り消せません」の一言で終わらせる対応は、行動基準に沿っていません。
査定額が決まる条件を説明しない
第4条第2項では、査定のときに引き渡し時期・車両の状態・市場の状況など、査定金額が決まる要因について十分に説明することが求められています。
金額だけを提示して、根拠の説明を省く進め方は想定されていません。「なぜその金額なのか」を聞くのは、無理な要求ではありません。
ただし、法律ではありません
ここははっきり書きます。JPUCの行動基準は業界団体の自主規制で、法律ではありません。
効くのは、会員として参加している事業者に対してです。参加していない業者には、行動基準を根拠として何も強制できません。 深夜に電話をかけてくる相手が会員でなければ、条文を示しても止まらない場面はあります。
一括査定への不信につながる書き方かもしれません。それでも、効く相手と効かない相手がいるという事実を知らずに申し込むほうが危険です。だからこそ、申し込む前の確認に意味があります。
デメリットを4つに整理します
電話の本数を、あとから減らせない
申し込みが完了した時点で、連絡先は配られています。配ったあとに取り消す手段は用意されていません。
減らせるのは申し込みの前だけ、と考えてください。
同じ話を何度も繰り返す
車種・年式・走行距離・状態・売却の希望時期を、業者の数だけ説明します。査定の日程調整も社数分あります。
金額が上がる可能性と引き換えに、時間を払う仕組みです。
地方では選べる社数が少ない
出張査定に来られる範囲に買取店がなければ、そもそも候補に出てきません。競争が起きなければ、一括査定の利点は薄くなります。
その場で決めるよう求められる
「今日中なら」と条件を出される場面があります。他社の査定がまだ残っている段階では、比較のために申し込んだ意味がなくなります。
使わないほうがよい人
一括査定をすすめる記事は、デメリットを並べたあとで「それでも使うべき」に反転します。反転させずに書きます。
日中に電話へ出られない人は向きません。折り返しが翌日以降に持ち越され、やり取りが長引きます。勤務中にたまった着信を、仕事のあとに処理することになります。
1社で決めて早く終わらせたい人も向きません。手間の対価として金額を取りにいく仕組みなので、手間を払わないなら利点だけが消えます。
売るかどうか迷っている段階の人は、申し込みを止めてください。連絡先を配った時点で、迷っている状態には戻れません。
店でも同じ相談を受けたことがあります。売るかどうかを決めかねていたお客様が、「一括査定は便利だけれど、電話が何回も鳴るのは嫌だ」と話していました。そのときは筆者が簡易的な見積もりを出し、金額の目安だけを持ち帰ってもらっています。結果として、その方は売らずに乗り続けることになりました。
迷っている段階で必要なのは、正確な査定額ではなく大まかな相場感です。 目安を知るだけなら、連絡先を配らずに済む方法があります。付き合いのある整備工場やガソリンスタンドで聞いてみてください。
申し込む前にできる確認
申し込んだあとの断り方より、申し込む前の確認のほうが効きます。
- JPUCの適正買取店に認定されているかを見る:適正買取店認定制度は、研修の修了者が在籍しているか、契約書がモデル約款に適合しているかなどを満たした買取店を認定する仕組みです。認定店の一覧はJPUCの公式サイトで公開されています。行動基準が効く相手かどうかを、申し込む前に確認できます
- 連絡先の配り方を確認する:全社へ一斉に配る型か、先に見積もりを出して上位数社に絞る型か。電話の本数を決めるのはここです
- 連絡方法と希望時間帯を指定できるかを見る:申し込みフォームに指定欄があるかどうかで、受け方が変わります
- 車の準備を先に終わらせる:申し込んでから査定日までは数日しかありません。洗車と書類の用意は申し込み前に済ませてください
準備の中身は別記事にまとめています。査定前にやってよいこととやってはいけないことは車を売る前の洗車の記事、コーティングをかけるべきかはコーティング車の査定の記事を読んでください。
よくある質問
メールだけでやり取りできますか
サービスによります。メール・LINEでの連絡に対応した一括査定もあります。申し込みフォームの連絡方法の欄を、送信前に確認してください。
申し込みをキャンセルできますか
査定の申し込み自体は断れます。すでに配られた連絡先を回収する仕組みはないため、各社へ個別に伝える形になります。売買契約を結んだあとの解除は、行動基準の第6条が扱う場面です。
電話番号を変えて申し込むのはありですか
やめてください。契約時の本人確認と食い違い、手続きが止まります。減らしたいなら配られる社数を絞るほうが確実です。
何社に申し込むのが適切ですか
社数が増えるほど比較の材料は増え、対応の負担も同じだけ増えます。1日で対応できる件数から逆算して決めてください。
査定額がいちばん高かった1社だけ残せますか
残せます。ほかの業者へは断りの連絡を入れてください。連絡を返さないまま放置すると、着信が続く原因になります。
まとめ|断ってよい線を知ってから申し込む
- 電話が集中するのは仕組み上そうなります。本数を決めるのは連絡先の配り方です
- 午後9時から午前8時の勧誘、契約解除の妨害や不当なキャンセル料、査定額の根拠を説明しない進め方は、JPUCの行動基準が禁止しています
- 行動基準は自主規制で法律ではありません。会員以外には効きません。 申し込む前に適正買取店かどうかを確認してください
- 日中に電話へ出られない人、1社で早く終わらせたい人、売るか迷っている人には向きません
- 車の準備は申し込みの前に終わらせてください
一括査定は、手間を払って金額を取りにいく仕組みです。手間を払える状況かどうかで決めてください。使わない判断も、同じだけ正当です。

