給油に寄ったスタンドに「車買取」ののぼりが出ている。ここで売れるのだろうか。
調べると「ガソリンスタンドは損をする」「専門業者へ出したほうがいい」という記事が並びます。書いているのは、ほとんどが車を買い取る側の会社です。
ただ、その説明のほとんどは外から書かれたものです。スタンドの中で値段を出している人間が書いた記事は、ほとんど見当たりません。
筆者は三級自動車整備士の資格を持ち、ガソリンスタンドで洗車・コーティングに加え、タイヤ・バッテリー・オイル交換・車検見積もりを担当しています。勤務先では車の買取を正式なメニューとして扱っています。
先に開示します。他社の買取額を知らないため、「スタンドと専門業者のどちらが高いか」は判定しません。 書けるのは、自分の店で実際に何が起きているかです。
結論|売れます。ただし現車を見て値段が付くわけではありません
売れます。買取はメニューとしてあり、相談を受ければ見積もりを出します。
問題は査定の仕組みが、多くの方の想像と違うことです。
査定士が車の周りを回って、傷を1つずつ見て値段を決める。そのような場面を思い浮かべているなら、実際とは違います。
ここを知らないまま出すと「思ったより安い」になります。 仕組みから書きます。
タブレットに入力すると、評価額が出ます
自分の店では2段階あります。
| 種類 | 入力するもの | 出るもの |
|---|---|---|
| 簡易見積もり | 車検証の情報と走行距離 | 概算の見積もり |
| 正式な見積もり | 上記に加えて、細かい情報とさまざまな角度からの写真(外装や内装、オドメーターや車台番号のプレートなど) | 評価額 |
簡易見積もりは、車検証と走行距離をタブレットに入力するだけです。 車を見る前に、数字が出ます。
正式な見積もりでは写真を足します。外装や内装、オドメーターや車台番号のプレートなどを、角度を変えて撮影し、タブレットに反映させます。それをもとに評価額が返ってきます。
写真を撮る場所には、それぞれ役割があります
外装や内装、オドメーターや車台番号のプレートなどには、それぞれ役割があります。
外装は傷や凹みの記録です。 内装は使用感が出る場所で、シートの状態や汚れが分かります。
オドメーターは走行距離そのものの記録です。 入力した数字と実車が合っているかを、画像で押さえます。
車台番号のプレートは、車両を特定するためのものです。 1台ごとに割り振られた番号で、車検証に書かれている番号と一致するかを確認します。同じ車種・同じ年式でも、番号は重複しません。
つまり撮影の目的は「きれいに見せること」ではありません。入力した情報と実車が食い違っていないかを、記録として残す作業です。
明確に誰かが査定するわけではありません。
現場の人間が「この傷は何点」と判断しているのではなく、情報と写真を入れると額が返ってくる仕組みです。
自分の店の話として書いています。他のスタンドが同じ方式かどうかは分かりません。
現車を人が見ないため、高く売りたい方には向きません
仕組みが分かると、向き不向きもはっきりします。
高く売ろうとする方には向いていません。 理由は2つあります。
1つは、現車を査定する人間が直接見るわけではないことです。 手をかけて維持してきた車でも、見て評価してくれる相手がその場にいません。
もう1つは、傷があるだろうという前提で概算の買取額が出ることです。
つまり状態が良い車ほど、その良さが値段に乗りにくくなります。 きれいに乗ってきた分の差が、写真と数字のあいだで薄まります。
洗車を欠かさず、屋根の下に置き、内装も汚さずに乗ってきた車があるとします。その手入れは実車を前にすれば伝わります。写真と入力項目に置き換えた時点で、伝わる量は減ります。
「傷がないこと」を証明するのは、「傷があること」を記録するより難しい作業です。
「ガソリンスタンドは損をする」と書かれているのは、方向としては合っています。ただし理由は「一律1万円だから」ではありません。現車を人が見ないからです。
向いているのは、査定に期待していない車です
逆を考えると、向いている車も分かります。
経年車や過走行の車で、あまり査定に期待していない方とは、相性が悪くありません。
もともと減点される要素が多い車なら、「傷がある前提」で額が出ても、落差が小さいためです。 期待していた額との差が開きにくくなります。
10万キロを超えた車をどう判断するかは、走行距離10万キロの車は売れますにまとめました。距離ではなく修理代で決める、という話です。
実際に来るのは、こういう方です
買取の相談で来られる方は、「高く売りたい」ばかりではありません。
免許を返納するので、片付けてしまいたい
ご年配の方が、免許を返納するから廃車手続きでもいいのでやってほしい、と来られます。
「廃車手続きでもいい」という言い方に、優先順位が出ています。額の話より先に、手続きを終わらせたいという相談です。
乗らなくなった車を置いたままにしても、税金や保険は自動では止まりません。動かさない車は、持っているだけで費用が出ていきます。 高く売る話より、そちらを先に片付けたいという状況です。
次の車が決まっていて、いまの車の行き先だけが残っている
カーリースを利用していて、乗り換える前の車を買い取ってほしいという方もいます。
次の車の話はすでに決まっています。残っているのは、いまの車をどうするかだけです。そこに何日もかけたくない、という状況で来られます。
どちらも「1円でも高く」ではありません
2つに共通しているのは、動機が金額ではないことです。手間をかけずに終わらせたい、という需要です。
給油や洗車で普段から寄っている店なら、その場で相談できます。車を売るためだけに、どこかへ出向く必要がありません。
冒頭で挙げた「専門業者へ出したほうがいい」という記事は、読者全員が高く売りたいと考えている前提で書かれています。 実際に来られる方を見ていると、その前提に当てはまらない場合があります。
値段が付かない車はどうなるか
「値段が付かない車は、引き取ってもらえないのでは」と心配される方がいます。
提携している買取業者に流す形があります。 自分の店の買取で値段が付かない車でも、引き取れます。
金額は車の種類によります。私が見ている範囲では、1万円以上になることが多いです。 すべての車を確認したわけではないため、必ずそうなるとは書けません。
「状態が良くても一律1万円になる」という説明を見かけますが、少なくとも自分の店の運用とは違います。 他のスタンドがどうかは分かりません。
動かない車や、事故で大きく損傷した車は、また別の窓口です。考え方は走行距離10万キロの車は売れますの後半にまとめました。
買い取った車はどこへ行くか
自分の店では、オークション業者に買い取ってもらっています。
「スタンドが買い取った車は、中古車として売られたり、部品として分解されたりする」という説明を見かけます。自分の店の流れは1本です。
店によって違う可能性はあります。気になるなら、出す前に聞いてください。 答えられない話ではありません。
よくある質問
専門業者とどちらが高いですか
他社の買取額を知らないため、判定しません。
書けるのは判断材料のほうです。分かれ目は「現車を人が見るかどうか」です。 見て評価してほしい車なら、見てもらえる相手を選んでください。
複数の業者に見せる場合の注意点は車の一括査定のデメリットにまとめました。
傷があると減額されますか
もともと傷がある前提で額が出ます。 傷を隠す意味はありません。
査定前に板金へ出すかどうかの判断は車を売る前に洗車すべきかにまとめました。直さずに出してください、という結論です。
廃車の手続きだけ頼めますか
免許の返納で来られる方は、実際にいます。まず相談してください。
その場で値段が分かりますか
簡易見積もりなら、車検証と走行距離で概算が出ます。 車検証を持って行けば、その場で数字を聞けます。
正式な見積もりは写真を撮る工程が入るため、少し時間がかかります。
10万キロを超えていても引き取れますか
距離だけで断られることはありません。判断の考え方は走行距離10万キロの車は売れますにまとめました。
まとめ|現車を見るかどうかで、向き不向きが決まります
- ガソリンスタンドで車は売れます。 買取はメニューとしてあります
- ただし現車を見て値段が付くわけではありません。 車検証と走行距離、さらに写真をタブレットに入力すると評価額が出ます
- 明確に誰かが査定するわけではありません
- 高く売りたい方には向きません。 状態が良い車ほど、その良さが値段に乗りにくくなります
- 向いているのは、経年車や過走行の車で、査定に期待していない方です
- 免許の返納や、リースの乗り換えで来られる方が実際にいます。 「高く売る」以外の動機です
- 値段が付かない車も引き取れます。 提携している買取業者に流す形があります
- 他社と比べてどちらが高いかは判定しません。 他社の額を知らないためです
売る前に決めておくことは1つです。手間を減らしたいのか、値段を取りにいくのか。 そこが決まれば、出す先も決まります。

