「数日で車検が切れるので見てほしい」というご相談をいただくことがあります。
結論から書きます。売るために車検を通す必要はありません。
私はガソリンスタンドで車検の見積もりを作っています。車検が切れそうな車が持ち込まれたとき、現場で何が起きるかを書くことができます。
この記事では、通さなくてよい理由を2つに分けたうえで、車検が「出せばすぐ通るものではない」理由と、仮ナンバーの本当の使い方を扱います。
先にお断りしておきます。査定額そのものや、いくらで売れるという金額は書けません。 査定は専門ではないためです。加えて、車検が切れた状態で「売りたい」というご相談は、これまで受けたことがありません。 売却の手続きそのものは、買取業者の記事のほうが詳しいはずです。
書けるのは、車検を通すまでの時間の話です。
結論|売るために車検を通す必要はありません
理由は2つです。かけた費用が戻らないことと、車検を通すには時間が要ることです。
1つ目は費用です。車検には整備費用と法定費用がかかります。その分を売却で取り戻す形にはなりません。 見積書の中身をどう読むかは車検の見積もりが高いという記事にまとめました。
2つ目は時間です。ここが本題です。車検は、お店にもよりますが出せばその日に通るものではありません。 修理箇所が多ければ時間がかかり、予約が埋まっていれば受けること自体ができません。
時間が無くなると、判断そのものができなくなります。売るか通すかを比べるには、通した場合の見積もりが要ります。 見積もりを取る時間がなければ、比べる材料が手元にそろいません。
いま自分の車がどの位置にいるかは、その場で確かめられます。車検証を出して、満了日を見てください。 残りが2か月を切っているなら、この記事の後半が直接関係します。
車検は、出せばすぐ通るものではありません
現場で起きるのは2つです。修理箇所が多くて時間がかかることと、予約が埋まっていることです。
数日前にご相談をいただいた車の話
「数日で車検が切れるから見てほしい」というご相談を受け、車検の見積もりをおこないました。
見積もりを作ると、修理箇所が多く出てきました。 タイロッドエンドブーツ、スタビライザーリンク、クーラーベルトなどです。項目をどう読み分けるかは車検の見積もりが高いにまとめました。ここで問題になったのは中身ではなく、作業に時間が要るという事実でした。
さらに予約の問題が重なりました。予約がいっぱいで、すぐには車検をおこなえない状況でした。 そこで仮ナンバーを発行し、後日あらためて車検をおこなっています。 それまでの間、お車はお店で預かりました。車検を通すまでに土日を挟んだため3〜4日かかっています。
「切れる前に持ち込めば間に合う」とは限りません。 こちらのお客様は切れる前に動いていますが、それでも当日には通せませんでした。
お車を預かれたのは、そのとき置く枠があったからです。修理の内容と予約の状況が重なると、車をどこに置くかという問題が発生します。
予約は、思っているより先まで埋まっています
近々の予約は、枠がないことのほうが多いです。
車検予約イベントの時期には、半年から1年以内の予約が入ります。 それだけで全部の枠が埋まるわけではありません。ただ、「来週お願いします」が通る前提で考えないほうが安全です。
2〜3月は特に埋まります。 年度末に車検の満了日が集まるためです。2〜3月に満了を迎えるなら、ほかの時期より早めに連絡してください。
2025年4月から、車検は満了日の2か月前から受けられるようになりました。 それまでは1か月前からで、それより早く受けると残りの期間が切り捨てられていました。
国土交通省は、この改正の理由に年度末へ車検が集中し、予約が取りにくくなっていることを挙げています。予約の取りにくさは、制度が変わるほどの話です。
満了日の2か月前には、受ける店に連絡してください。 見積もりを取っておけば、修理箇所の量も先に分かります。
見積もりだけを先に取ることもできます。 車検を受けると決めていなくても構いません。金額と作業量が分かってから、通すか手放すかを決めてください。 順番を逆にすると、決める材料がないまま満了日が来ます。
仮ナンバーは、車検を受けるための制度です
買取業者の記事では、仮ナンバーは売るために店舗へ持ち込む移動手段として説明されています。制度の説明を読むと、本来の用途は別のところにあります。
仮ナンバーは、制度の上では「臨時運行許可」という名前です。 許可を受けると赤い斜線の入ったナンバーが貸し出されるため、現場では仮ナンバーと呼ばれています。
国土交通省は、臨時運行許可をこう説明しています。未登録自動車の新規検査・登録や、車検切れ自動車の継続検査を受けるために運輸支局等まで運行する場合などに、運行目的・期間・経路を特定したうえで特例的に許可し、市町村などが赤い斜線の入ったナンバーを貸し出す制度です。
もともとは「車検を受けに行くための制度」です。売るための移動は、そこに乗せられる使い方の1つにすぎません。
制度の条件は決まっています。
- 手数料は750円
- 運行期間は必要最少の日数で、5日が上限
- 申請窓口は最寄りの地方自治体、または運輸支局・自動車検査登録事務所
5日という上限があるので、取ってから予定を決めるのでは間に合いません。動く日を決めてから取りに行ってください。
私の店では、仮ナンバーは自分たちで発行しに行きます。 店が車検場へ持っていくために使うからです。手数料は、車検の引き取りのときにいただいています。
自分で窓口へ行く前に、依頼する店が代行してくれるか聞いてください。 代行してもらえるなら、平日に役所へ行く手間がなくなります。
制度の書き方で、もう1つ大事な点があります。運行の目的と経路を特定して許可されるという部分です。車検を受けに行くために取った仮ナンバーで、別の用事に使うことはできません。買取店へ持ち込むために使うなら、その目的で申請します。
⚠️ 虚偽の申請には罰則があります。 道路運送車両法第34条・第107条により、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められています。目的も経路も申請したとおりに使ってください。
切れてしまうと、選択肢が減ります
減る選択肢は2つです。自分で運べなくなることと、置き場所が要ることです。
車検が切れた車は公道を走れません。 自走で店まで持ち込むことができなくなります。残る手段は、仮ナンバーを取るか、積載車で運ぶか、来てもらうかの3つです。どれを使うかを、切れる前に決めておいてください。
動かせない車は、どこかに置いておく必要があります。 先ほどのお車はお店で預かりましたが、常にそうできるとは限りません。 預かる枠にも限りがあります。
運ぶ手配も自分でおこないます。積載車を頼むか、出張査定で来てもらうかのどちらかです。買取業者の記事が出張査定を勧めているのは、この手間を省けるからです。
自宅の駐車場に置いておけるかを、先に確認してください。 置き場所があるかどうかで、動ける速さが変わります。
それでも手放すと決めたなら
車検は通さずに、そのまま出してください。 通さずに出す点は、買取業者の記事と同じ結論です。
迷っている理由によって、読む記事を変えてください。
- 見積もりの金額で迷っている → 車検の見積もりが高い
- 年数だけが理由で迷っている → 車の乗り換え時期
- 走行距離が理由で迷っている → 走行距離10万キロの車は売れます
よくある質問
車検を通してすぐ売るのは損ですか
答えが2つに割れる質問です。整備の側から見た考え方を車検の見積もりが高いのFAQにまとめています。
車検が切れた車を自分で運んでもいいですか
公道は走れません。仮ナンバーを取るか、積載車で運びます。
仮ナンバーは自分で取りに行けますか
取りに行けます。窓口は最寄りの地方自治体、または運輸支局・自動車検査登録事務所です。依頼する店が代行してくれる場合もあるので、先に聞いてください。
車検が切れたまま置いておいても大丈夫ですか
公道を走れないだけで、私有地に置いておくこと自体は問題ありません。
時間が経つほど、車の状態は悪くなります。 ゴム部品の劣化やサビは、乗っていなくても進むためです。年数で何が変わるかは車の乗り換え時期にまとめました。
売る前にタイヤやバッテリーを替えたほうがいいですか
替える必要はありません。理由は売る前のタイヤ・バッテリー交換にまとめました。
洗車や傷はどうすればよいですか
外装と車内の扱いは車を売る前に洗車すべきかにまとめています。
まとめ|車検が切れる前に決められたことは、切れた後には決められません
- 売るために車検を通す必要はありません。 かけた費用は戻らず、通すには時間も要ります
- 車検は出せばすぐ通るものではありません。 修理箇所が多ければ時間がかかり、近々の予約は枠がないことのほうが多いです。2〜3月は特に埋まります
- 車検が切れる前に持ち込んでも、当日に通せないことがあります。 実際に仮ナンバーで後日に回し、その間はお店で預かりました
- 2025年4月から、車検は満了日の2か月前から受けられます。 年度末の集中を分散させるための改正です
- 仮ナンバーは、もともと車検を受けに行くための制度です。手数料750円・5日が上限
- 車検が切れると、自分で運べなくなり、置き場所が要ります
今日できることが1つあります。車検証を出して、満了日を見てください。 残りが2か月を切っているなら、売るか通すかを決める前に、まず受けられる店を押さえるほうが先です。
選べる道は、時間があるうちにしか残りません。

