「冬って、洗車の回数を増やしたほうがいいんですか?」
寒くなると、洗車の受付で増える質問です。冬にお客様からいちばん多く受ける相談が、頻度の話です。
答えは2つに割れます。雪が降る地域かどうかで、まったく別の話になるためです。
先に結論を書きます。雪が降らない地域なら、冬に頻度を上げる必要はありません。
筆者は三級自動車整備士とキーパーコーティング技術2級の資格を持ち、ガソリンスタンドで洗車とコーティングを担当しています。
最初に立場を開示します。勤務しているエリアは、基本的に雪が降りません。豪雪地で毎日雪をかき分けるような使い方は経験がないため、本記事では踏み込みません。書くのは、雪が降らない地域に住む人の冬と、そこから雪国へ出かける日の話です。
結論|答えは2つに割れます
| 状況 | 冬の洗車頻度 |
|---|---|
| 雪も融雪剤もない地域で、冬もいつもどおり乗る | 変えなくて大丈夫。月1回、条件によって2週間に1回 |
| スキーやスノーボードで雪国へ行った | 数日以内に1回。優先するのは下回り |
普段の基準は、季節に関係なく変わりません。基準の決め方は洗車の頻度はどのくらいが適切?にまとめています。
冬に変わるのは、頻度ではありません。洗う日の選び方と、拭き上げです。
雪が降らない地域は、頻度を上げなくて大丈夫です
冬の洗車を扱う記事の多くが、「1〜2週間に1回」という数字を出しています。
数字の前提は融雪剤です。雪道に撒かれた塩化ナトリウムや塩化カルシウムが車に付くため、早く落とす必要がある。降雪地の話としては正しい内容です。
融雪剤が撒かれない地域に、同じ数字を当てはめる理由はありません。
「冬だから付く汚れ」は現場で思い当たりません
冬は乾燥して静電気が起きるため粉じんが付きやすい、という説明をよく見かけます。結露で汚れる、という記述もあります。
現場で洗車を担当していて、冬だから増えたと感じる汚れはありません。
夏には虫の死骸が付きます。春の花粉と黄砂は、洗っても翌日にはまた乗っている状態でした。季節で汚れ方が変わる実感はあります。冬に何かが増えるという実感だけが、正直なところありません。
汚れが増えないのであれば、頻度を上げる根拠もありません。
冬に変わるのは「洗える日」のほうです
頻度より先に効いてくる変化があります。洗える日が減ることです。
夏なら、朝でも夕方でも洗えます。冬は気温と日照で時間帯が絞られます。日が落ちるのも早く、午後に出遅れると乾かし切れません。
同じ「月1回」でも、冬は達成の難易度が上がります。頻度の数字を増やす前に、洗える日をどう確保するかを考えるほうが実用的です。
「2週間に1回」を冬に当てはめると破綻します
冬の洗車を勧める記事は、頻度を上げるように書いたあと、後半で条件を足していきます。
- 気温が上がる昼から夕方前に洗う
- 氷点下の日は避ける
- 早朝と夜間は避ける
- 晴れた日を選ぶ
条件は、どれも間違っていません。問題は、足し合わせたときです。
「2週間に1回」と「気温が上がる時間帯の晴れた日だけ」を両立させようとすると、洗える日は一気に減ります。仕事の休みと重ならない週も出てきます。
予定で決めた間隔は、冬に守れません。守れない予定を立てると、守れないことに慣れます。 春まで一度も洗わない、という結果につながりやすい流れです。
決めるのは間隔ではありません。洗う条件です。気温が上がって、その日のうちに乾かせる日が来たら洗う。冬はその考え方のほうが続きます。
例外は、雪国へ行った日です
雪が降らない地域に住んでいても、融雪剤を踏む日があります。スキーやスノーボードで雪国へ出かけた日です。
実際に、雪山から帰ってきた車が洗車に来ます。
融雪剤の主成分は塩化ナトリウムと塩化カルシウムです。金属を錆びさせる成分が、走行中に下回りへ跳ね上がります。
害は、見えるところに出ません
厄介なのは、ボディを見ても分からない点にあります。
洗車で目に入るのはボディとホイールだけです。融雪剤の影響が最初に出るのは、足回りやマフラーといった、普段のぞかない場所になります。
見えないまま進み、気づいたときには戻せません。
整備で見た車|足回りとマフラーに穴が開いていました
整備の現場で、下回りのサビが進みすぎた車を見たことがあります。
浸食が進み、足回りの部品とマフラーに穴が開いていました。 表面が茶色くなっている段階ではなく、素材が抜けている状態です。
お客様に伺うと、よくスキーに行かれるとのことでした。融雪剤の影響は考えられます。
原因を1つに決めることはできません。普段はあまり乗らない車でもありました。走らない車は下回りが乾きにくく、放置によるサビも重なります。走行距離が少ない車は錆びにくい、とは限りません。
もう1つ、書いておかなければならないことがあります。
その車、下回りは一応洗っていたそうです。
洗っていた車が、穴が開くまで進みました。冬の下回りでいちばん大事な部分だと考えています。
問われるのは、洗ったかどうかではありません。洗い方のほうです。
下回りをどう洗うか
理想は、高圧の水で下回りを徹底的に洗い流すことです。
跳ね上がった融雪剤は、部品の裏側や隙間に入り込みます。水を当てて流し切る必要があります。
普段の手洗い洗車でも、最初に洗うのはホイールとタイヤ、そして手の届く範囲のタイヤハウス内側と車体の下側です。フロント・サイド・リヤの地面に向いた面を先に流します。雪山から帰った日は、同じ場所により長く水を当てる、と考えてください。
洗車機の下部洗浄は、期待しすぎないでください
洗車機に下部洗浄のコースが付いていることがあります。冬の対策として選ぶ人もいます。
機械にもよりますが、下回りはあまり洗えません。
下から水を噴き上げる構造でも、当たるのは限られた面です。隙間に入った汚れを流し切るには足りません。洗車機そのものは普段づかいで便利な設備ですが、下回りの本気の洗浄を任せる装置ではありません。洗車機の使い方は洗車機で傷つく?で別途まとめています。
現実的な方法は2つです
高圧洗浄機を持っている人ばかりではありません。持っていない前提で、方法は2つあります。
1つ目は、自分で手洗いできる場所で洗うことです。 高圧の水が使える洗車場なら、時間をかけて下回りを流せます。角度を変えながら、足回りとマフラーのまわりを重点的に当てます。自分でやる分には、納得がいくまで流せる利点があります。
2つ目は、店に頼むことです。 注意点として、下回り洗浄だけを単品で受けているメニューは基本的にありません。通常の洗車に追加する形です。
キーパーの公式メニューで見ると、方法は2通りです。
| 頼み方 | Mサイズ・税込 | 内容 |
|---|---|---|
| 純水手洗い洗車+下回りクリーニング | 3,960円+750円=4,710円 | 洗車に下回りを追加 |
| プレミアム純水手洗い洗車 | 5,930円 | 下回りの洗浄とピッチ除去が最初から込み。ホイールクリーニングと前席の掃除機掛けも含む |
現場では下回りの洗浄をアンダーウォッシュと呼んでいます。公式のオプション名は「下回りクリーニング」で、全サイズ一律750円です。
金額は2026年8月時点の公式価格で、Mサイズのものです。店舗によって価格やサイズ分けが異なる場合があります。
1,220円の差でホイールクリーニングと掃除機掛けが付くため、雪山から帰った日にまとめて片付けたいなら、プレミアムのほうが割に合います。
予防策もあります
雪山へ行く回数が多いなら、下回りとマフラーの防錆塗装という手があります。
洗う手間を減らす方向の対策です。毎年通う人であれば、検討する価値があります。
洗う日の選び方
冬に洗う日を決める基準は3つです。
- 気温が上がっているか
- その日のうちに乾かせるか
- 風が強すぎないか
早朝と夜は避けます。気温が低い時間帯は、水が乾く前に冷えていきます。日が落ちてからの洗車は、拭き上げが追いつきません。
昼前から午後にかけて、気温が上がってきた時間帯が現実的です。
温水は使いません
冬の洗車にぬるま湯を使うことを勧める記事があります。40度前後の湯で霜を溶かす、という内容です。
店では温水を使っていません。冷たい水で洗い、拭き上げまで手早く進めます。
家庭で試す場合も、熱い湯を凍ったガラスにかける行為はおすすめできません。急な温度差はガラスに負担をかけます。霜は無理に落とさず、エンジンをかけて解けるのを待つほうが安全です。
スノーブラシで雪をこすり落とす方法にも注意が必要です。硬い粒を引きずると、塗装に傷が入ります。
冬の拭き上げは、目的が違います
ほかの季節の拭き上げは、水じみを防ぐための作業です。
冬は理由が1つ増えます。凍結です。
拭き残した水分が、そのまま凍ります。狙って拭いておきたい場所は4つです。
- ドアまわりのゴム
- 鍵穴
- 給油口の蓋の裏とキャップの周り
- ドア内側の縁とトランクの縁
ドアのゴムが凍ると、開けるときに無理な力がかかります。ゴムが傷んだり、切れたりする原因です。
ホイールの拭き上げは、季節を問わず一番最後に回します。放置すると水じみが残るためです。冬は水が冷たく作業が雑になりやすい場所なので、意識して最後に取っておいてください。
なお、洗車後に凍って開かなくなったというトラブルは、店では見聞きしていません。 勤務エリアで雪が降らないため、確認できていないだけです。凍結が日常の地域では、扱いが変わる可能性があります。
拭き上げの道具と手順は洗車の拭き上げに使うタオルにまとめています。
コーティングしている車の冬
コーティングを施工している車は、未施工車より洗車の回数が少なくて済みます。
現場では、施工後のお客様に月1回から2回を目安に案内しています。冬だからといって案内を変えることはありません。
融雪剤についてはどうか。コーティングには自浄効果があり、汚れが固着する前なら雨である程度流れます。
融雪剤が同じように流れるかは、確実なことが言えません。洗えばある程度は落ちます。雨に任せて大丈夫とまでは言い切れないため、雪山から帰った日は洗うほうを選んでください。
はじきが落ちてきたと感じる場合の原因と対処は、コーティングの効果がないと感じたときで切り分けています。
よくある質問
雪が積もったまま走ってもいいですか
視界と灯火類の雪は落としてから走ってください。屋根に積もった雪は、ブレーキをかけたときに前へ崩れます。
落とすときはこすらないでください。硬い粒を引きずると傷が入ります。
洗車機は冬でも使えますか
使えます。凍結する気温でなければ問題ありません。
下回りだけは期待しすぎないでください。
洗車機の下部洗浄は、まったく意味がないのですか
意味がゼロというわけではありません。付いたばかりの泥や汚れは、ある程度流れます。
足りないのは、隙間に入り込んだ分を流し切る力です。雪山から帰った日の対策として、下部洗浄だけで済ませる判断はおすすめできません。
気温が上がらない週が続いて、洗えません
無理に洗わないでください。凍る条件で洗うと、拭き上げが間に合わずに水が残ります。
雪も融雪剤も踏んでいないなら、1週間や2週間ずれても問題は起きません。融雪剤を踏んでいる場合は、屋内の洗車場や店を使うほうが確実です。
洗わないまま春まで越したらどうなりますか
雪も融雪剤も踏んでいないなら、大きな問題は起きません。汚れがたまった状態からの洗車は傷が入りやすいため、春に洗うときは水をしっかりかけてから始めてください。
融雪剤を踏んだまま越冬した場合は話が別です。落ちない汚れは時間とともに進みます。
鳥のフンが付いた場合も、暖かい日まで待っていいですか
待たないでください。日数に関係なく落とす汚れがあります。対処は鳥のフンが付いたときの落とし方にまとめています。
まとめ|間隔ではなく、条件で決める
- 雪も融雪剤もない地域なら、冬に頻度を上げる必要はありません。月1回、条件によって2週間に1回のまま
- 冬だから付く汚れは、現場で思い当たりません
- 変わるのは頻度ではなく、洗える日が減ること。予定ではなく条件で決めます
- 例外は雪国へ行った日。数日以内に、下回りを優先して洗います
- 下回りは洗車機の下部洗浄では足りません。自分で高圧の水を当てるか、店で洗車にオプションを追加します
- 整備で見た車は、一応洗っていて、それでも足回りとマフラーに穴が開いていました。問われるのは洗ったかどうかではなく、洗い方です
- 冬の拭き上げは凍結対策。ドアのゴムと鍵穴の水分を残しません
冬の洗車は、回数を増やす話ではありません。洗える日を逃さない話です。

